通勤快読ブックレビュー

電車の中は誰にも邪魔をされない私だけの図書館。何かいい本はないかとお探しのあなたのために。

カラスの親指 【道尾秀介】 (2008)

【あらすじ】

武沢竹夫(タケ)はやさぐれたベテラン詐欺師。元は真っ当なサラリーマンだったが、闇金の取立てで職を失い、気づけば借金取りに。取立てに行った家で、娘を抱えた母親が自殺してしまう。良心の呵責から闇金の経理資料を警察に持ち込んでしまい、復讐を恐れて逃げ回る生活を続けていた。
そんな時に、鉄橋で下を覗き込む一人の男・入川鉄巳(テツ)を見かける。タケはテツを拾い、二人はコンビで仕事をするようになる。
ある日、二人はスリに失敗した少女(まひろ)を見かけ、逃がしてやる。生活に窮していたまひろは、タケの言葉を頼りに、姉のやひろとその恋人の貫太郎を連れて、タケの家に転がり込んだ。
「トサカ」という猫も加わり、5人と1匹の奇妙な生活が始まったのだが、平和の日々は長くは続かなかった。
タケに潰された闇金の「ヒグチ」の執拗な嫌がらせは徐々にヒートアップし、その結果「トサカ」が変わり果てた姿で発見される。
5人は「ヒグチ」への復讐を決心し、一世一代の大計画を企てる・・・。

 

【感想など】

この「カラスの親指」は、コンゲームという「互いに騙したり騙されたりでストーリーが二転三転する」ミステリーのジャンルに属します。

ヒグチへの復讐のために、タケとテツが大計画を企てて実行する、というのが物語の大部分を占めているのですが、(その大計画の中でも、「実はこうだった」という小さいひっくり返しがいくつかあるのですが、)物語の終盤で、実は「ヒグチ」は全部気づいていた、という大きなひっくり返しがドカンと来て、完全な敗北感のままストーリーは終わるのか、と思ったら、また最後に超大きなひっくり返しがドドドドカーンと来る、という、実によく練られたストーリーです。

コンゲームものは、読み終わった後で読者がどれくらい「これは作者にやられた(騙された)なー!」と思えるかで作品の善し悪しが決まると思うのですが、そういう意味では、この作品はかなり面白いと言えます。

きっちりと騙されてしまいましたねー。

また、そのひっくり返しの伏線がちゃんと張られていたかどうか(「そんな事、どこにも書いてなかったじゃないか。」と読者に言わせないように)が、これもまた作品の善し悪しを決める材料になりますが、結果がわかった後で読み返してみると、(私が気がつかなかっただけで、)確かにちゃんと伏線が張られています。

そういう意味では、フェアな作り方をしている作品で、非常に好感度が持てますね。

 

物語の前半は、タケとテツの身の上や、まひろ達が転がり込んでくる、舞台のお膳立ての部分なので、ちょっとかったるい感じがします。

後半、大計画がスタートしたあたりからは、面白くて一気に読んでしまいますね。

結末も非常に穏やかな締めくくり方で、騙されたとは言え、とても後味の良い作品です。

皆さんもぜひ、騙されてみてください。

 

【評価】
★★★★✩

 

【映像化】
2012年に映画化されています。配役は、タケに阿部寛さん、テツに村上ショージさん、まひろに能年玲奈さん、やひろに石原さとみさん、というキャストでした。違和感なく、いい配役だと思います。村上ショージさんには正直ビックリだったのですが、結構いい味だしてましたね。
ちなみに、能年玲奈さんはまだデビューしたての新人でした。
今でこそショートカットのイメージが完全に定着していますが、この作品に出る前までは長かったんですね。原作でまひろがショートカットだったために、この作品で髪型をショートにして、それ以来ずっとキープしているということです。

 


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