【あらすじ】
捜査一課特殊班を翻弄する毒ガス事件が発生。現場で発見された白骨死体は、50年の時を超え、過去のクーデター計画へとつながっていた。時空を超えたふたつの事件を繋ぐミッシングリンク「S」とは!?
【感想など】
この小説には、昭和の時代に起きたクーデター計画、平成の現代で起きた毒ガス事件という二つの事件が描かれており、それぞれの事件がなぜ起きたのか、それぞれの事件を関連づけるものは何なのか、というのが全体を通しての最大のテーマになっています。
それぞれの事件の描写は非常に面白く読めます。昭和の時代、東京五輪の期待高まる世の中の裏側で静かに進行していった クーデター計画。特に、理系大学生の(どちらかと言えば目立たないタイプの)松島が、毒ガスという武器を手に入れたことによって狂気の革命家へと変貌していく様に引き込まれます。そして平成の現代、毒ガスを盾に国会議員総辞職を求めた犯人「S」が、ネットを駆使して世論をコントロールしていく過程、逆にネットを過信し過ぎたが故に計画が破綻していく過程は、手に汗を握ります。
というように、それぞれの事件の描写が非常に読み応えがあって面白いだけに、じゃあ、その二つの事件を結びつけるものは何なの?というところが少々物足りない感じがしました。「え、これだけ大きな事件を起こしておいて、それだけ?」的な・・・
う~ん・・・ 残念!
でも、なかなか面白かったですよ。
【評価】
★★★★✩
【映像化】
まだ映画、ドラマにはなっていないようです。静かな狂気に満ちた犯人を演じてくれそうな俳優さんがなかなか難しいのですが、ここはひとつ、佐藤健さんにお願いしてみたいですね。