通勤快読ブックレビュー

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レミングスの夏 【竹吉優輔】 (2014)

【あらすじ】

レミングは自殺しない。集団で移動して、海や川を渡るんだ。新天地に向かうために。」
レミングの名を称した中学2年生の男女5人組が、市長の娘を誘拐する。彼らはなぜ、危険な犯罪に手を染めたのか。
彼らを駆り立てる過去の出来事とは一体何なのか。彼らの目指す新天地は、どこにあるのか。


【感想など】

これは、一夏の少年少女達の熱い戦いを描いた青春サスペンスです。
6年前のある事件をきっかけに、その犯人への復讐だけを頭に描いて淡々と暮らしてきた南木秀平(ナギ)。
そしてナギの一番近くにいて、彼の計画に賛同し協力する千葉旭(アキラ)とその仲間達。
市長の娘を誘拐して、六か条の要求を市長に突き付けるのだが、それが誘拐の目的ではなく、真の目的である犯人への復讐を巧みにカモフラージするための作戦だった・・・。

突っ込み所はいっぱいあります。
小学生、中学生の子供達に、復讐のためとは言え、過酷とも言える信念を持ち続けることができるのか?
真の目的を果たすためだけであれば、そのような大それた計画は必要ないんじゃないか?
等等。
しかし、それらの突っ込み所はあるものの、スリルとサスペンスに満ち溢れた、非常に面白い一冊です。
少年少女達の、ちょっと押せばすぐに倒れて壊れてしまいそうなガラスのように脆い心。
だけども、お互いがお互いを思い、かばい合い、助け合う強い絆。
そして、仲間達を気遣いながらも、折れそうになりながらも、己の信念を貫き通そうとするナギ。
読んでいて、本当に痛々しいくらいに純粋で繊細な少年少女の想いが、強く胸を打たれます。

 

なぜそのような犯罪に手を染めたのかという最大の謎については、終盤まで明かされることなく、かなり引っ張ります。
ただ、展開が非常にスピーディーで、随所にイベントも盛り込まれているので、飽きることはないのですが、特に、誘拐された市長の娘(少年少女達の同級生)である宏美の心情の変化が、ナギの計画の成否に対する重要な鍵となるのですが、これが物語を時間経過と出来事の列挙だけの薄っぺらいものではなく、感情、心情の起伏が感じられる厚みを持ったものにしており、作者のストーリーテラーとしての才覚を感じることができます。

序盤で張り巡らした伏線の回収も滞りなく行われていますね。特に、計画遂行のリミットがなぜその日でなくてはいけなかったのか、の真相(ナギの考え)は、なかなかよく考えられていて、ナギの決意の深さを示す秀逸なエピソードになっていると思います。

 

ラストシーン、少年少女達は新天地に行けたのか、という疑問が解決するのですが、(残念ながら)予想範囲内の結末です。
傷つく人が最も少ない結末がナギの願いでもあるわけですから、まあ、わからなくもないですが、読む側からすれば、もうひとひねり欲しかった、という気がします。

ちょっと欲張りですかね。

 

【評価】
★★★★✩

 

【映像化】
映画化が決定しており、本年公開に向けて準備中だそうです。
レミングス」の少年少女達を、子役の皆さんがどのように演じるのか、興味ありますね。
ぜひ、見てみたいです。


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