通勤快読ブックレビュー

電車の中は誰にも邪魔をされない私だけの図書館。何かいい本はないかとお探しのあなたのために。

セカンド・ラブ 【乾くるみ】 (2012)

【あらすじ】

1983年元旦、里谷正明は会社の先輩から誘われたスキー旅行で、内田春香と出逢った。やがて付き合い始めた二人は、とても幸せだった。春香とそっくりな女・半井美奈子が現れるまでは・・・。

清楚な春香と大胆な美奈子、対照的な二人の間で揺れる正明の心。果たして、物語の結末は・・・?

 

(ネタバレあります!)

 

【感想など】

文庫本の帯に、「イニシエーション・ラブ、あのショック再び!」と書いてあるのを見ると、それだけでハードルが上がってしまいますね。

実際、「イニシエーション・ラブ」は傑作だと思っておりまして、読後の「やられた感」はハンパなかったのですが、それを超えるとなると、どこにどんな仕掛けがあるんだろう、という疑惑を持って読み進んでしまうので、途中でほぼトリックが想像できてしまいます。

ただ、そのトリックの一人二役というのは、実現性という意味ではどうなんでしょう。友達レベルであれば通用するかも知れませんが、この作品のように恋人という深い関係の相手を欺き続けるのは、ちょっと無理があるような気がします。

もう一歩深読みをすると、春香は本当に春香なのか?実は美奈子なのではないか?とも考えられます。冒頭のシーンで正明が「いったいおまえは誰なんだ?」と言ってますし、ラストの空港のシーンでの春香の口調は、明らかに美奈子の口調ですからね。

それについての明確な回答は出ていないので、真相は闇の中ですが。

最終的に正明が死んでしまうというのも、あまり好ましい結末だとは思えないですね。まあ、それがあってこそ成り立つ、冒頭のシーンとラスト・シーンなのですが。

冒頭の結婚式場でのシーンは、当然正明が新郎で、その目線で書かれていると思っていたし、ラスト・シーンの空港では春香と紀藤が旅立って行くのを、どこかの物陰から正明が見ているのかと思っていたら、正明が実は死んでいたとなると、冒頭とラストの情景がガラッと変わってきますよね。

その効果は確かに認めますが、う~ん、ちょっとな~、という感じです。

 

と、文句ばかりになってしまいましたが、キャラ設定もちゃんとしてるし、テンポも良かったので、楽しく読める作品だと思います。「実は、イヤな女」と「実は、なさけない男」を書かせたら、乾くるみ氏の右に出る者はいないですね。登場人物のキャラ設定が明確でブレがないので、ここまで面白い作品になるのでは、と思います。

 

この作品の楽しみ方は、実はもう一つあります。

乾くるみ氏の遊び心なのでしょうか、私もあとがきに書かれているのを読んでわかったのですが、登場人物の女性2名の名前に注目です。主人公・内田春香(うちだはるか)は宇多田ヒカルアナグラムになっており、姉妹の半井美奈子(なからいみなこ)は中森明菜アナグラムになっているんですね。

それがわかると宇多田ヒカル中森明菜に関係する言葉が至る所に散りばめられているのに気がつくでしょう。

そもそも、作品のタイトル「セカンド・ラブ」からして、中森明菜の大ヒット曲ですね。一方、宇多田ヒカルには「ファースト・ラブ」という大ヒット曲がありますから、作者も充分に意識して仕掛けてきていますね。

また、各章のタイトルも凝っています。

第1章「緩やかな動き」・・・ 中森明菜「スローモーション」

第2章「時は自動的に」・・・ 宇多田ヒカル「オートマチック」

・・・

第7章「二分の一の女」・・・ 中森明菜「1/2の神話」

第8章「あなたに夢中」・・・ 宇多田ヒカルAddicted To You

・・・

終章「北へと向かう翼」・・・ 中森明菜「北ウィング」

というように、二人のヒット曲をイメージして章のタイトルがつけられています。

まだまだ隠されているものが、きっとあるでしょう。

それを探しながら読み返してみるのも、また楽しいのではないでしょうか。

【評価】

★★★★✩

【映像化】

まだ映画、ドラマなどにはなっていません。

もし映像化されるとしたら、主人公・里谷正明には三浦春馬さん、ヒロインの内田春香には真野恵里菜さんで見てみたいですね。

 

 

 

 


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